【読書感想】頑張ってる人を笑わない【何者/朝井リョウ】

読書感想

朝井リョウさんの「何者」を読みました。

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2012年に出版された小説で、2016年には映画化もされています。
佐藤健さん、有村架純さんなど、豪華キャストが出演することでも有名になったので、知っている方も多いと思います。

こんな人におすすめ

  • 何か目標に向かって頑張っている人
  • 頑張りたいけど行動できない人
  • 就活経験がある人
  • SNSをやってる(知ってる)人

概要

就活時期に突入した同じ大学の5人が、それぞれ内定に向けて活動していくというストーリーです。

  • 人を分析するのが得意な拓人
  • ひょうひょうとしていて世渡り上手な光太郎
  • まっすぐな性格の瑞月
  • ポジティブにガンガン突き進む理香
  • 何事も客観視で冷静な隆良

最初から全員が友達同士だったわけではありません。

拓人、光太郎はルームメイト。
瑞月は2人と、理香の友人。

理香と隆良は同棲しており、拓人、光太郎と同じアパートに住んでいたことが発覚したため、就活をきっかけに部屋に集まるようになります。

登場人物に人間味がありすぎます。
キャラクターそれぞれ、どこかに実在しているのではないかと思うくらいです。

冒頭で登場人物のtwitterのプロフィールが出てきたり、文中にツイート内容も出てきたり、現代らしい人間関係がリアルに感じられて面白かったです。

私は読み終わって全員好きになりました。

ストーリー構成

前半は主人公目線で、周りの就活状況や人間関係の様子が描かれていきます。
ただ、みんなで和気藹々と頑張るだけの物語ではありません。

後半は、視点が一変。
それまで読んでいた読者も冷やっとするのではないでしょうか。

読んでて過去を思い出して「うわあーっ」てなる感覚が蘇ってきました。

グサグサ心を抉ってきますが、大丈夫です。耐えてください。
最終的にはなぜか清々しい気持ちになります。

新卒の就活から数年経った今読んでよかったです。
登場人物を好きになれたのも、もう当事者の年代じゃないからだと思います。

就活時期とか社会人1年目とかだったら、図星すぎていたたまれなくなって途中で読むのやめたかもしれません。

頭の中の可能性に逃げない

隆良の「100点じゃないなら世に出さない方がいい」という完璧主義な考え方が、読んでて一番心がえぐられました。

私も学生時代同じことを考えていました。
イラストを描くのが昔から好きだったのですが、作品を描いても「私より上手い人がいるからネットに上げるのはやめておこう」「私はまだ下手だからコンペなどに応募するのはやめておこう」「美大行っても私なんか食べていけないから受けるのやめよう」とずっと思っていたのです。

でもそれは本当にそう思っていたわけではなく、客観的な評価に晒されるのが怖かったからです。
もしイラストに誰も反応してくれなかったら、もしコンペに落ちたら、美大に落ちたら、それは他人から「下手だ」という評価を得てしまってもう逃げられないと思っていました。

誰かに「下手だ」と言われる前に、自分で「下手だから」という言い訳を作って、本当の評価から目をそらしていました。

社会にでて数年経ってからそれが間違っていたと気づきました。
さっさと評価をもらってしまった方が、圧倒的に成長できるのです。

仮に結果が0点だったとしても、「この方法では0点という結果が出た」ことが積み重ねになります。
でも、何もしなかったら何も積み重なりません。

どんなに素晴らしいアイデアを考えていたとしても、頭の中にあるだけなら現実では無です。
無を何回繰り返しても無のまま。

そもそも100点のアイデアがあったとして、100点のままアウトプットするのは圧倒的に難しいです。
伝えるのにも技術が必要だからです。
必ず「こんなはずじゃなかったのに」となります。

だったら自分の中で50点でもどんどん世に出していきましょう。
結果0点でも意味のある0点になります。

思いが強すぎて何も出せないのは本当に本末転倒です。

何もしなければ、頭の中のアイデアは100点の「可能性」を含んだままでいられます。
しかしあくまで「可能性」であり、現実には何も起きていない「幻想」です。

どんなに素晴らしくても何もしなければそのアイデアに価値はありません。
可能性の中に居続けるのは、ただの「現実逃避」です。

変なプライド持たずに周りの評価を受け止められる人が一番成長する、と今となっては思います。

何もしてない奴が頑張っている人を笑うな

「何もしてない」人が、「行動してる」人を笑う権利なんてありません。
先ほど書いたように、どんなにカッコ悪くても目標に向かって行動してる人の方が圧倒的に前に進んでいます。

そして実際に「行動してきた」人は、「行動してる」人を笑うことはありません。
笑ってくる奴は行動してない奴なので、聞き耳持たなくて良いです。

今、ずっとやってこなかったアウトプットをやろうとしていますが、本当に難しいです。
このブログも含めすごく大変です。
何か行動して頑張ってる人を笑うなんて到底できません。

大学時代、頑張っている人を「意識高い」と揶揄する言葉がありました。
だけど、必死で行動してるなかで、少しでもゴールに近づくために選んだ一手なのだから、今は全く笑う気になりません。

行動し始めた人は、最初は多分誰もがダサいんだと思います。
最後の方の拓人の面接の場面、面接としては上手くない受け答えをして、きっと「ダサい」姿だったんだろうけど、その本気のアウトプットは確実に大きな一歩だったと思います。

誰しも一歩引いた評論家気取りになってしまうことに心当たりがあるのではないでしょうか。
SNS時代、気軽に自分の意見を発信する人が増え、顕著にみられるようになりました。

かくいう私もふと頭によぎってしまうことはありますが、人のことが気にならないほど自分のことに一生懸命になりたいと思います。

まとめ

全員まとめてディスった上で、全員まとめて救うような物語の書き方でした。
読者のことも例外なく刺してきます。

でも最後はなんだか前向きになれるような、元気になれるような終わり方でした。

私も今さまざまなことに挑戦してる最中ですが、勇気をもらいました。
まだまだ目標には遠いですが、可能性の中に生きてたころより圧倒的に自分の人生に納得感があります。

朝井リョウさん、本当にすごいです。

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