復讐のため裏社会に足を踏み入れた一般人と、殺し屋たちの群像劇
伊坂幸太郎さんのグラスホッパーを読みました。
今回は「殺し屋シリーズ」最新作の「777」が発売されるとのことで、シリーズの第1作であるこちらを再読しました。
続編で「マリアビートル」「AX」「777」が出版されています。
登場人物
群像劇形式になっており、下記の3人が中心となって話が進んでいきます。
鈴木
作中唯一(?)の一般人。
妻を殺された復讐のために、裏組織に足を踏み入れる。
鯨
自殺専門の殺し屋。鯨の前に立つと自殺したくなってしまう。
蝉
ナイフ使い。軽い身のこなしでいとも簡単に殺人を犯す。
女子供など、人が嫌がる仕事も厭わない。
感想
殺し屋という物騒なテーマですが、それぞれのキャラクターが立っていて、内面を知ると憎めない人物ばかりです。
明らかにヤバい人たちばかりなのに、「もしかしていい人なのでは?」と思ってしまいます。
(いい人の定義とは…となってしまいますが)
また、文章の臨場感がすごいです。
冒頭の、とある人物が車に轢かれる描写や、蝉が敵と対峙したときの戦闘シーンなど、こまかい描写がまるでスローモーションの映像を見ているかのようです。
ちなみにグラスホッパー(grasshopper)とは、英語でバッタのことです。
作中、要所要所で虫と人間の共通点などが挙げられます。
「これだけ個体と個体が接近して、生活する動物は珍しいね。人間というのは哺乳類じゃなくて、むしろ虫に近いんだよ」
p5 グラスホッパー/伊坂幸太郎(角川文庫)
「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。気づけば飛びバッタだ。」
p159 グラスホッパー/伊坂幸太郎(角川文庫)
「人もごちゃごちゃしたところで、暮らしていたら、おかしくなる。人間は密集して暮らしている。通勤ラッシュや行楽地の渋滞なんて、感動ものだ」
p160 グラスホッパー/伊坂幸太郎(角川文庫)
ボリューム
文庫で335ページです。1ページ1分の速さで5時間半くらい。
ただ伊坂さんの文章は読みやすいのでそんなにかからないかもしれません。
先が気になってどんどん読めてしまうと思います。
続編も面白いので、気になった方はぜひ。
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